活動レポート
2024年2月

2024.02.20

令和6年第1回定例会 総括質問の報告

2月20日、令和6年第1回定例会で総括質問があり、私は会派を代表して質問に立ちました。
今回取り上げました質問項目は、以下の6項目です。

1. 子どもの権利に関する条例の制定について

2. 公契約条例の制定について

3. 学校図書・学校司書の充実について

4. 高齢者施策について
(1)認知症おでかけ安心保険事業について
(2)行政にしかできない終活登録等の支援について

5. 広島城のライトアップ等について

6.「迎える平和」の推進について

総括質問の動画はこちらからご覧いただけます≫

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1.子どもの権利に関する条例の制定について

最初に、「子どもの権利に関する条例」の制定についてお伺いいたします。
平成元年11月第44回国連総会において、「児童の権利に関する条約」が採択され、平成6年4月に日本も批准しました。
この条約では、子どもは「弱くておとなから守られる存在」という考え方から、それだけではなく、子どもも「ひとりの人間として人権をもっている、権利の主体」という考え方に大きく転換させています。
つまり、子どもを権利の主体とし、おとなと同様にひとりの人間としてもつ様々な権利を認めると同時に、成長の過程にあって保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。
また、差別の禁止、子どもの最善の利益を考える、子どもは命を守られ成長できる、自分に関係ある事柄について子供の意見を尊重する、この4原則が条約で示され、これは、「こども基本法」にも取り入れられています。
さらに、「こども基本法」では、地方自治体は、こどもの状況に応じた施策を策定し、実施する責務を有するとされ、また、こどもの意見を取り入れながら、「市町村こども計画」を策定することも求められています。実効性のある施策・計画を実行する取組が必要です。
そこで、令和5年5月現在、神奈川県川崎市を始めとして、5政令市を含む64の自治体が、いわゆる、「子どもの権利に関する条例」を制定しています。
先日会派で、「川崎市子ども夢パーク」に視察に行きました。川崎市では平成12年に「川崎市子どもの権利に関する条例」を制定して、例えば、市政についての子どもの意見表明の機会を保障する「市子ども会議」の設置、子どもの自主的・自発的な参加活動を支援するため、子どもが子どもだけで自由に安心して集うことができる拠点としての「川崎市子ども夢パーク」の設置、「子どもの権利の日事業」などの事業自体に子どもが参加して、効果的な事業とするなどの取組を行っています。
子ども夢パークは、こどもが「自分の責任で自由に遊ぶ」ことを大事にしており、こどもが自分たちで考えて運営していくことを、誇りとしている姿が非常に印象的でした。まさに、未来を担う人材育成の一つの形ではないかと思います。
昨年4月1日に、子ども家庭庁が設置された「こどもまんなか」元年といえる本年度、本市において「子どもの権利に関する条例」を制定する意義があると思います。
わが党もこどもの権利に関する条例の制定に力を入れています。東京都では公明党が主導して令和3年3月に「東京都こども基本条例」が制定されました。
令和4年9月には広島県議会でわが党の尾熊議員が、子どもの意見を反映した子どもの権利条例を県として制定することを提案しています。
本市の「第2期広島市子ども・子育て支援事業計画」でも、「全ての子どもが健やかに育つための環境づくり」、「社会全体で子どもを育てる環境づくり」を掲げており、これは、子どもの権利条例の趣旨と重なるのではないかと思います。
また、新年度では、次期子ども・子育て支援事業計画の改定の予算が計上されており、子どもの権利に関して本市がより一層の取組を行う良い契機となります。
そこで、お伺いします。

質問:

子どもの権利の内容、さまざまな場所における子どもの権利の保障、こども議会の設置を始めとした子どもの意見を聞く場所の設置、子どもが子どもの施策決定に参加できる規定、子どもからの相談及び救済、さらに、子どもの権利擁護についての市の行動計画並びにその検証方法などについて定めた条例を制定すべきではないかと考えますし、それが本市のこども施策の本気度を示すメッセージとなると思いますが、本市の見解をお聞かせください。

答弁:

○本市においては、「第2期広島市子ども・子育て支援事業計画」に基づき、子ども・子育てに係る諸施策を総合的に推進しているところであり、こうした取組を進めるうえで、児童虐待、いじめ、貧困など子どもを取り巻く様々な問題から子どもを守るために、子どもの権利が保障されることは大変重要であると認識しています。
○国においては、令和4年6月に「こども基本法」を策定し、その基本理念に、保障すべき子どもの権利について具体的に規定するとともに、国・地方自治体に対して、基本理念にのっとり、こども施策を策定·実施するよう求めています。
○本市においては、「第2期広島市子ども・子育て支援事業計画」の計画期間が6年度に満了することから、次期計画については、「こども基本法」に規定された「市町村こども計画」と一体のものとして策定し、「こども基本法」の趣旨に沿った取組を着実に進めることが重要であると考えており、条例の制定については、今後の施策の進捗状況に応じて判断していくものと考えています。

2.公契約条例の制定について

次に、公契約条例の制定についてお伺いいたします。
公契約とは、当事者の少なくとも一方が公の機関である契約を言い、公契約条例とは、公契約に係る手続きを通じて、自治体が一定の政策を実現する事項を定めたもので、特に、労働者の労働条件や処遇につき、一定以上の確保を求めるものです。
1949年(昭和24年)に国際労働機関(ILO)で「公契約における労働条項に関する条約」が採択されました。
この条約では、第1条で公契約について定義し、第2条で、同一地域の同一性質の労働に対し定められているものよりは有利な賃金、労働時間その他の労働条件を関係労働者に確保する条項を含んでなければならないとしています。
ただし、日本では現在まで批准されていません。
国や自治体が公共工事や公共サービスなどを民間に発注する公契約の多くは、予定価格内で最も低い金額の入札者が落札する入札制度で受注者を決定しています。
ただ、入札制度は、事業者が度を超えた低価格で入札し、落札後は利益を出すために、労働者の賃金や下請業者に対する請負代金を徹底的に切り下げ、その結果、非正規労働者を典型とする低賃金労働者が生まれることに繋がりかねません。
最低賃金を支払って法律上は問題ないとしても、例えば広島県の最低賃金は、時給970円です。1日の労働時間を8時間、1ヶ月の平均労働日数を21日とすると、1ヶ月フルタイムで勤務しても給料の総支給は162,960円、社会保険、税金などを引いた手取額は、約12万5,000円となり、健康で文化的な生活をすることが困難な水準です。
低賃金は、労働意欲を低下させ、サービス水準の低下、また、福祉予算の増加などに繋がり、市民の不利益につながります。
低価格入札による採算の悪化で、給食事業者が事業を停止したことも記憶に新しいところです。
このようなことを防止するために、私は、令和元年の決算特別委員会で、一例として、清掃業務について最低制限価格制度の導入を求めました。
本市においては、入札にかかる建設工事の資格審査においては、社会保険の加入が審査対象となっており、一部労働者の労働条件の保証が図られています。しかし、労働者へ支払う賃金、下請け契約の価格の妥当性などについては、民間の契約ということで審査の対象となっていません。
また、物価スライド条項により契約金額の変更ができるようになっていますが、変更した増額分が、賃金上昇分の支払として実際に労働者に支払われているのか、監査できる仕組みもありません。
公契約について、労働環境の確保を図る観点から、自治体が受注者等に対して報告を徴収し、必要な指導等を行うことができること、労働環境報告書等の適正な労働環境の確保を確認するための資料を提出させること、労働者等の申出、申出による不利益取扱いの禁止、立入調査の権限、条例や契約違反の場合の是正措置と、是正措置に従わない場合等の契約解除、損害賠償、公表等の制裁等を規定する条例を制定している自治体は、令和5年10月1日時点で、全国で3政令市を含む85の自治体があります。
本市も、このような公契約条例を設けることは、受注者等に対して労働者の処遇等を厳しく監視するというメッセージを与えることになり、結果、適正な賃金を得る労働者が増えることで、市民へのサービスの質の確保にも繫がります。
そこでお伺いします。

質問:

本市の公契約への取組の姿勢を示すためにも、労働者の労働条件や処遇、コンプライアンスの確認、一定額以上の賃金の支払を受注者に求めること、労働者から発注者への通報の仕組や相談及び救済、労務監査の実施、これらの施策の検証方法等について定めた条例を制定すべきではないかと考えますし、それが本市の公契約への取組の姿勢を示すメッセージとなると思いますが、本市の見解をお聞かせください。

答弁:

○議員御指摘の公契約条例は、地方公共団体からの受注業務の履行に当たり、事業者が労働者に支払う賃金に関する定めなどを内容とするもので、適正な労働条件を確保するための手法の一つと理解しています。
○労働条件の具体的な内容については、現行の労働法制の下、原則として労使当事者間の交渉で定めるべきとの認識により、これまで本市では、適正な労働条件の確保に向けた交渉を促す環境を醸成することが重要と考え、公共工事等における最低制限価格等の水準の見直しや業務委託の労務単価の増額改定などを行い、ダンピングによる受注を防いで従事する労働者の賃金にしわ寄せが及ばないよう、入札・契約制度の見直しに継続的に取り組んできたところです。
○物価高騰等、労使双方にとって厳しい環境が続く中、適正な労働条件の確保に資する制度見直しは不断に検討する必要があると考えており、この中で他都市等における公契約条例の制定・運用状況についても、改めて研究等してまいりたいと考えています。

3.学校図書・学校司書の充実について

次に、学校図書・学校司書の充実についてお伺いいたします。
令和4年度から8年度にかけて、国は「第6次学校図書館図書整備等5か年計画」に基づき、学校図書館図書標準の達成、図書の更新、新聞の複数紙配備、学校司書の配置拡充などのための財政措置を行っています。
本市の場合、令和4年度の地方交付税措置で試算すると、図書費が小学校1億679万円、中学校6417万円、学校司書費が小学校1億6186万円、中学校6967万円です。
本市では、予算措置として、本市の図書の購入予算は一定額の確保はされているようですが、実際の購入費は、全国学校図書館協議会が抽出して行った学校図書館調査概要によると、全国平均より小学校で1校当たり約14万円、中学校で1校当たり約11万円少ない状況です。
先ほどの学校図書館図書標準とは、国が定めた、学校図書館に整備すべき蔵書の標準冊数のことで、広島市ではほぼ達成しています。
しかし、これはあくまでも数の上の話で、本は傷んだり、内容が古くなって現在の知識に合わないものになったりした場合に、更新する必要があります。国も整備計画で、古くなった図書の更新を求めています。
さて、読書の大切さについては、令和5年度の全国学力・学習状況調査の分析で、読書の好きな児童ほど、教科の平均正答率が高い傾向がみられること、また、令和3年に国立青少年教育振興機構青少年教育研究センターが行った「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」では、子どもの頃の読書量が多い人は、物事に対する考え方、取り組む姿勢、行動など、日常生活・社会活動において重要な影響を及ぼす能力、いわゆる意識・非認知能力や認知機能が高い傾向にあり、さらに、紙媒体で読書している人の意識・非認知能力は最も高い傾向があるとされています。
しかし、読書環境が調っている家庭ばかりではありません、そのため、子どもが長い時間を過ごす学校の図書館で読書が好きになる環境の整備が重要となります。
そこで、何名かの現役の学校司書の方に、図書の更新について聞きました。図書の更新には学校司書の役割が重要ですが、広島市の学校司書は担当する学校が一人当たり4校から多い方で8校となっており、現状では、学校司書は貸し出しや返却の処理などの通常業務で手一杯で、図書の整備まで手が回らないとのことです。
因みに、調査したところ昨年10月の段階で、ほとんどの政令市では、学校司書一人当たりの担当校は1校でした。また、学校図書の管理のための、パソコンなどの機器やソフトウエアなどの整備が遅れているそうで、学校によっては、パソコンが古くて使えなかったり、使えても表計算ソフトで管理を行っているそうです。
これでは、図書の更新などの情報は学校司書の方が自分で収集し、更新が必要な図書を調べなければならず、現実的ではありません。
校長が学校図書の充実に熱心なところ、スポーツなどの充実に熱心で学校図書については余り関心がないなど、学校ごとに、学校図書館の取組に差があるとも聞きました。
学校により力を入れるところが異なるのは、特色ある教育として尊重すべきとは思いますが、読書センターとしてだけでなく、学習・情報センターとしての学校図書館の整備は公平に行われるべきだと思います。
そこでお伺いします。

質問:

こどもが読書を好きになる、読書に対する取組を進めることができる学校図書館の整備が大切です。古くなった図書の更新を適切にすすめるために、学校司書の増員や、図書管理用のコンピューターやソフトウエアの配備を進めるべきではないかと考えますが、本市の見解を教えてください。

答弁:

○児童生徒の様々な興味・関心に応えるとともに、自発的・主体的な読書活動を促すためには図書館資料の廃棄と更新を計両的に行う必要があると考えています。各学校においては、司書教諭や校内の学校図書館担当者を中心として、学校司書の協力も得ながら、破損や情報が古いこと等により廃棄する本や、新しく購入する本を選定し、学校長が決裁した後、廃棄及び更新する図書の除籍・登録等の事務を行っているところです。
○こうした中で、議員御指摘のように図書の更新が円滑に進んでいないと思われる学校があることを把握した際には、スクールサポートスタッフ等も含めた教職員全体で更新作業に取り組むことなど、学校の実情に応じた助言を行っています。また、今後は、全ての学校に学校図書館の蔵書管理ソフトを導入する等、図書館に係る業務の効率化を計両的に進めることとしており、学校司書の増員については、こうした取組の成果も踏まえつつ、その必要性を検討してまいります。

4.高齢者施策について
(1)認知症おでかけ安心保険事業について

次に、高齢者施策について2点お伺いいたします。
わが党が推進していた認知症基本法が施行されました。認知症の方が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症の理解の増進予防環境の整備が必要です。
先日、広島市社会福祉審議会から本市に答申のあった「第9期広島市高齢者施策推進プラン」では、認知症施策の拡充が盛り込まれています。
ただ、私が昨年6月の本会議の質問で提案した、認知症おでかけ安心保険事業については、いまだ含まれていないようです。
民法では、認知症等による「責任無能力者」が事故を起こしても賠償責任は負いませんが、監督義務者が、必要な監督義務を怠ったと認定されると、賠償責任を負う可能性があります。
例えば、介護を担う人などが事故を予見できたのに回避しなかった場合、介護者が賠償責任を負うこともあります。
成年後見人等も同様で、成年後見制度の利用促進の障害となる可能性があります。
民間で販売されている個人賠償責任保険は、まだ一般的ではないですし、本人の資力が少ない場合には加入が難しい場合もあります。
保険に入っていないから、外出はしない、させないという事態は、だれもが希望を持って暮らす共生社会の実現とはいえません。
認知症等であっても、誰もが、本人らしく生きるために、取り除くことができる生活上の支障については、それを解消することが生活の質を高め、また、住み慣れた地域で安心して生活できることにつながります。それこそが共生社会の実現ではないでしょうか?
そこでお伺いします。

質問:

認知症の方が、経済的状況に関わらず、本人らしく生きるために、県内では、東広島市、福山市、三原市で導入された、認知症おでかけ安心保険事業について、一定の所得制限なども考慮した形でも良いので、本市も導入を検討すべきではないかと考えますが、本市の見解をお聞かせください。

答弁:

○本市では、高齢者の誰もが、それぞれに役割を果たしながら、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる社会の実現を図っていくため、令和6年度からの3年間を計画期間とする「第9期高齢者施策推進プラン」を策定しました。このプランでは、重点施策の一つに「認知症施策の推進」を掲げており、本年1月から施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」等を踏まえ、認知症の人と家族等を支える取組や、認知症に関する正しい理解を深めるための普及啓発活動などの施策を総合的かつ体系的に推進することとしています。
○国は、認知症に関する様々な保険が普及していくよう民間保険会社の取組を後押しすることとしており、加入支援等を先行して実施している自治体の取組事例を収集し、その効果を分析するとしています。本市では、国に対し、収集した取組事例に基づく政策効果について早急に分析するとともに、国による制度化について検討するよう、他の政令市とともに要望を行っているところであり、引き続き、国の対応や先行実施している自治体の状況を注視していきたいと考えています。
○本市としては、「高齢者施策推進プラン」に掲げる認知症サポーターの養成や認知症カフェの普及のほか、認知症の人が行方不明になった場合の早期発見・保護を目的とする地域のネットワークづくりなどにより、認知症の人が安心して外出できる環境を整えていく中で、まずは、選択肢の一つとして民間保険があることについて、相談等の機会を通じ周知を図ってまいりたいと考えています。

4.高齢者施策について
(2)行政にかしできない終活登録等の支援について

2点目は、行政にしかできない終活登録等の支援についてです。
令和4年2月議会で質問し、言及していますが、身元のわかっている市民にも関わらず、親族に引き取られない遺骨が増えています。
過去には、生活保護受給者の方の遺骨がほとんどでしたが、現在ではそうでない方の遺骨も増えているようです。
遺骨の引き取り手のない親族等の連絡先は簡単には分からないため、時間と費用をかけて調査しますが、住所氏名は判明しても、電話番号までは わかりません。そのため書面で連絡するしかなく、返事はなかなか来ません。
無縁墓地に埋葬すれば、とりあえず遺骨の行き先は決まりますが、亡くなった方の意思を無視してしまうことになりかねません。
また、一人暮らしの高齢者が増えています。その方のいざというときに近所の方が本人の葬儀の希望やお墓などを知っていても、親族でなければ行政から亡くなったことなどは個人情報として教えてもらえず、葬儀など本人の希望を伝えることはできません。
また、跡継ぎのいない夫婦などで、一方配偶者が先に他界し、その後、もう一方の方が亡くなった時に、お墓の場所がわからない場合もあります。
これらの問題は、亡くなった方の情報が適切なときに、適切な方に伝達されないことから起こります。
そこで、ひとつの解決策として横須賀市等で行われている「終活支援情報の登録事業」があります。
これは、市役所が情報の中継点の役割をする事業です。なぜなら、親族などの連絡先が分からない場合、病院や救急隊、警察などは何かあれば本人について必ず市役所に問い合わせるからです。
事業の内容は、簡単に言えば付加価値のある新しい住民登録です。
対象者は市民全て、登録できる内容は、 氏名・本籍・住所・生年月日、緊急連絡先、支援する事業者、かかりつけ医師やアレルギー等、終末期医療における事前指示書であるリビングウイルとか、人生の終末についてのエンディングノート、遺言書等の保管場所、臓器提供意思、葬儀や遺品整理の生前契約先、墓の所在地など、本人しか分からない重要な事項のうち希望するものです。
葬儀や遺品整理の生前契約先の登録は、業社にとっては、せっかくの契約が履行されないことが減ります。違法業者は登録されると困るので、淘汰されるなど消費者保護の一環にもなります。また、民間事業者を圧迫するようなこともありません。
平成30年の6月議会で馬庭議員が質問し、私も令和4年2月議会で質問しました。その時の答弁で、本市は「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実践や普及啓発を進める中で、高齢者や関係者のニーズ把握に努めつつ、ACPを含む終活に係る支援について、行政としてどのような対応が可能か見極める必要があると考えておりまして、引き続き横須賀市をはじめとする他都市の動向や民間事業者等が実施しております終活サービスの提供状況等も注視しながら、検討をしていきたい」と答弁されました。
アドバンス・ケア・プランニングは、自分が望む医療やケアについて家族や医療・介護の専門職などと話し合い、共有する取組ですが、いざというときに、その方に連絡できなければ意味がありません。その連絡先を登録しておくことが重要なのです。
具体例を示します。横須賀市では、令和2年度までに183件の登録がされ、2件の登録が活かされました。
その1つでは、連絡先の姪から、3つの要望があったそうです。
1つ目は、「自分以外の緊急連絡先の人を教えて欲しい」です。亡くなった本人は緊急連絡先として5人登録していましたが、姪が知らない方がいたけれども、連絡が取れ、その方は火葬に間に合ったそうです。
2つ目は、「遺書の保管場所を教えて欲しい」です。自宅の寝室のベッドの下の黒いカバンの中にあり、無事、活用されたそうです。
3つ目は、「お墓の場所を教えて欲しい」です。亡くなった本人は横須賀市在住でしたが、お墓は静岡県にあり、無事に納骨できたそうです。 これらは、終活支援情報の登録がなければ実現できませんでした。
現在、この事業は、横須賀市をはじめ、鎌倉市、逗子市、岐阜市、愛知県大府市、東京都豊島区で開始しており、増えています。
そこでお伺いいたします。

質問:

本市では、一人暮らしの高齢者が増え、遺言を残すことなく亡くなる方も増えています。高齢者が安心して暮らせる社会として、本人の最後の意思を尊重するため、是非、終活登録事業を実施するべきだと思いますが、本市の見解をお伺いします。

5.広島城のライトアップ等について

次に、広島城のライトアップ等についてお伺いいたします。
広島城については、「広島城基本構想」が、令和2年5月に策定され、その中で、史跡広島城跡整備につき、今後当面の取組の指針として基本的な考え方を3つ示しています。
1つ目は、「重層的な歴史性を基本とした魅力づくり」、これは来訪者が天守閣だけでなく広島城全体をパッケージとして見て回るようにして、不十分だった広島城内の回遊性向上を図るものです。
2つ目は、「来訪者目線に立った公園運営」、これは公園としての魅力を高め、市民をはじめとする来訪者の憩いの場所にふさわしい空間づくりを図るものです。
3つ目は、「広島観光のネットワーク拠点」。これは観光的な側面から広島城外とのネットワーク化を図り、広島城跡を活かした景観づくりに加え、サイン施設等を整備し、広島城跡と周辺の平和公園などの拠点とのネットワークを形成し、魅力的な都市空間づくりを図るものです。 現在、本市は「史跡広島城跡保存活用計画」を策定中で、その素案には、「活用のための整備は、史跡内で完結するものではないことから、周辺を含めた歴史的景観の維持・向上を図り、統一感を持った整備手法についても配慮する」と記載されています。
さて、広島城天守閣では、夜間のライトアップを行っていて、G7の時は7色に、9月21日世界アルツハイマーデーにはオレンジ色に、10月乳がん啓発月間ではピンク色にするなどしています。
ただ、LEDなどの省エネタイプではないですし、ライトの着色は色つきフィルムを貼って実施するので、容易ではありません。
広島城の周辺の街灯はデザイン街灯ですが、これもLEDではないですし、古いので塗装も剥げてきています。
先日、会派で姫路城を視察しました。姫路城では平成4年に整備されたライトアップ設備を更新する際に、省エネ効果の高いLED化を導入し、さらに、単にLED化するのではなく、フルカラーLED照明を導入し、照明のデザインについても、照明の有名な専門家に姫路城全体のデザインを委託されました。
結果、姫路城全体が美しくなるように照明がデザインされており、夜間の観光客の増進にも一役買っているようです。
また、事務所からの操作で多様な照明の演出も出来るようになり、様々な姫路城の外観を楽しめるようになっています。
広島城全体をパッケージとして、城内の回遊性向上を図り、また、平和記念公園、ひろしまゲートパーク、中央公園広場エリア・サッカースタジアムから夜の広島城へと観光客の回遊性を高める有機的な取組が、地域の活性化に繫がると思います。
そこでお伺いします。

質問:

広島城の魅力向上、それによる観光客の増加、特に夜間の観光客の増加に、天守閣だけではなく、中央公園広島城区域および周辺道路の街灯を含めた全体をパッケージとしたライトアップの更新が必要だと考えますが、本市の見解をお伺いします。

答弁:

本市の魅力を高めていく上で、良好な夜間景観を作り出し守っていくことは、本市を訪れる人、住まう人のいずれにとっても、今後、一層重要となっていくものと考えています。特に、広島を訪れた方の宿泊滞在を促すため、夜間の活動の魅力を増やす取組の一環として、夜間景観の魅力向上は重要な方策として認識しています。
その際、特にライトアップなどに用いる照明設備とその照明デザインは、夜間景観づくりの主要な手段として、公共空間、民間施設のいずれにおいても、適切に設置・活用されるよう取り組むことが求められています。
近年では、新しい技術による照明設備や照明デザインが広がってきており、本年1月には、お二人の著名な照明デザイナーをお招きし、「ひろしまの夜景を創る」をテーマに景観シンポジウムを開催しました。
シンポジウムでは、基調講演や私自身も参加したパネルディスカッションを通じて、「夜間景観は広島が世界に発信し続ける平和のメッセージである。」といった多くの気づきを得、市民の皆さんとともに私も認識を深めたところです。
今後、都心部、周辺部、山・島などそれぞれのエリアで、その特性に応じた光の魅力的な生かし方を考え、来訪者のみならず市民にも愛される夜間景観を目指して取組を強化していきたいと考えています。
こうした方向性のもと、広島城をはじめとする市内主要か所をライトアップするための照明設備や照明デザインの適正配置等について、関係部署が連携して検討を進めていきたいと考えています。

6.「迎える平和」の推進について

最後に、「迎える平和」の推進について2点お伺いいたします。
本市では、核保有国の為政者を始め、より多くの方に広島に来てもらい、被爆の実相に触れ、被爆者の思いを深く受け止めて頂いた上で、核兵器廃絶に向けた取組を進めていただくことが重要として、世界の為政者の被爆地訪問や、様々な国際会議の誘致に取り組む「迎える平和」を推進しています。
我が党も、被爆の惨禍を国際社会に発信することが必要だと訴え、G7サミットを始めとする国際会議の広島開催を要請してきたところであり、国際情勢が緊迫化する中、唯一の戦争被爆国として各国の政治指導者らに被爆の悲惨さを訴え続ける「迎える平和」を推進する取組に、私も共感しています。
昨年5月には、これまでの「迎える平和」の取組の中でも最高レベルの国際会議であるG7広島サミットの開催が実現し、参加したG7首脳や8つの招待国の首脳、国連など6つの国際機関の長、さらには、ウクライナのゼレンスキー大統領に、平和記念資料館の視察や被爆者との対話を通して被爆の実相に触れていただくとともに、芳名録には、核兵器のない平和な世界への願いを込めたメッセージをそれぞれ残していただきました。
また、各国首脳の原爆死没者慰霊碑への参拝・献花の際には、松井市長に、碑文の説明を行う機会が与えられ、松井市長はその説明の中で、被爆者の皆様は、過去の悲しみに耐え、憎しみを乗り越えて、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」との思いで全人類の共存や繁栄を願っており、これがまさに「ヒロシマの心」であるということを話されました。
各国首脳が、それをしっかりと受け止めていただいたことが、世界に広く発信されたところです。
このように、世界中の人々に広島に来て頂き、被爆の実相に触れ、被爆者の思いを深く受け止めていただく「迎える平和」を推進することの意義を、私はあらためて感じました。
ただ、年々被爆者の高齢化が進み、被爆体験をお話しいただける方々が少なくなっている状況にあって、今後は、次代を担う世界中の若者に対し、被爆者の体験や平和への思いをきちんと受け継いでいくことが一層重要になると考えています。
こうした中で、新年度予算には、「国連ユース非核リーダー基金プログラムへの協力のための予算」が計上されています。ユース非核リーダー基金は、令和4年8月の第10回NPT再検討会議において、岸田総理が「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表した際、その一環として、同基金の立ち上げのための国連への資金の拠出を表明したものです。
このプログラムは、国連が、核兵器国、非核兵器国の双方から未来のリーダーとなる若者を日本に招待し、被爆の実相に触れてもらうことを主要な目的としています。
これに関して、令和4年12月の本会議および昨年の令和5年度予算特別委員会で、我が会派の田中勝議員が、「G7の7か国の若手外交官や軍縮専門家をG7広島サミットのその後、毎年広島に招き、被爆の実相に触れる取組の推進を国へ働きかけてはどうか」と、「国連ユース非核リーダー基金」の活用を訴え、要望してきました。
同プログラムは、既にオンラインでの研修が始まっており、参加者100名は、18歳から29歳までの世界中の若者2,000名以上の応募者の中から選定され、今後研修を経て、その中からさらに選ばれた参加者が広島・長崎に1週間のスタディ・ツアーに参加することとなっていると聞きました。
「迎える平和」を推進する広島市としては、絶好の機会になるのではないかと考えます。
そこでお伺いします。

質問:

(1)本市は、国連ユース非核リーダー基金プログラムについて、これまで国や国連とどのような調整を行い、本市として同プログラムにどのように関わっていくのか、お聞かせください。

答弁:

(1)
○令和4年8月に国連ユース非核リーダー基金プログラムの設置が表明されて以降、本市から外務省に対し、プログラムの参加者が被爆の実相に触れることや、本市の若者との交流の機会を持つことを実現させるべく、本市の同プログラムヘの積極的な関与を働き掛けてきたところです。これに対し、外務省からは、当該基金を通じた取組の効果を最大化するためにも、広島市による協力を含め、引き続き国連側との調整を行うとの回答を得ています。
○また、国連側に対しても、本市がこれまで受け入れてきた「国連軍縮フェローシップ・プログラム」の実績を踏まえ、本市としても積極的に協力したい旨を伝えていたところ、同プログラムの一環として世界各国と広島、長崎の若者による国際会議を本年8月下旬に開催する方向で検討しているとの連絡があったところです。
○本市としては、被爆体験講話の聴講や平和記念資料館の視察、本市の若者との交流機会の提供などを通して、同国際会議を含む基金プログラムの参加者の受入れに積極的に関わっていきたいと考えており、引き続き、外務省や国連側と調整してまいりたいと考えています。

次に、このように「迎える平和」を推進し、国内外から訪れる幅広い年齢層や国籍の方々に被爆の実相を分かりやすく伝える最も重要な施設は、言うまでもなく平和記念資料館です。
ただ、G7広島サミットを契機として、これまで以上に平和記念資料館への関心が高まったことなどにより、時間帯によっては入館待ちの長い行列が発生し、資料館内も混雑する状況が続きました。
この状況を改善するため、本市では新年度予算に、平和記念資料館の混雑対策のための予算を計上しています。
我が党からは、本市に対し、入館希望者が資料館前で極力待つことなく入場ができるよう、デジタル技術を活用したネット予約システムの導入や、乳幼児を抱えた方を始め妊婦、障がい者、高齢者等に配慮した、長時間並ばずに入館できる「こどもファスト・トラック」の設置を提案し、要望してきたところです。また、『こどもファスト・トラック』については、昨年10月の令和4年度決算特別委員会で、田中勝議員が、「このような社会的配慮は、福祉国家の必須条件」と訴えました。
そこでお伺いします。

質問:

(2)ネット予約システムの導入は、既に2月16日から試験的な実施を開始していますが、我が党のもう一つの提案である「こどもファスト・トラック」の設置については、現在どのような検討状況か、お聞かせください。

答弁:

(2)
○「迎える平和」を推進する本市としては、一人でも多くの方に平和記念資料館を訪れていただき、被爆の実相にしつかりと触れてもらうことが重要であることから、昨年から課題となっている入館時や館内での混雑対策として、今月16日からオンラインでのチケット購入や予約システムの導入等の対応を行ったところです。
○これに加え、乳幼児を抱えた方を始め、妊婦、障害者、高齢者等には、別途入館の際に長時間待たせることのないような特別な配慮が必要であると考え、窓口に申し出ていただくことにより、列に並ぶことなく優先的に入場できるよう、平和文化センターと調整し、来月1日から実施することにしています。

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