活動レポート
2020年6月

2020.06.15

令和2年 第4回 定例会 議案質疑の報告

 6月15日、令和2年第4回定例会で、一般質問のあと、議案質疑を行いました。
今回取り上げました項目は、以下のとおりです。

「広島市市税条例等の一部を改正について」

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「広島市市税条例等の一部を改正について」

第64号議案 広島市市税条例等の一部改正について、2点、質問致します。
1点目は、現所有者の申告制度の新設についてお伺いいたします。
議案説明書によると、土地又は家屋について、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として、登記又は登録がされている個人が死亡した場合は、当該土地又は家屋を現に所有する者に、住所及び氏名、その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させるとともに、正当な事由がなく申告をしなかった場合においては、その者に対し、10万円以下の過料を科する。こととされています。
具体的には、現所有者は、現所有者であることを知った日の属する年の翌年の1月31日又は現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過した日のいずれか遅い日までに、申告書を提出しなければならないこととされています。
この、現所有者とは、第一次的には相続人・受遺者を指し、それらがいない場合には、当該不動産の買主、特別縁故者などを指すと思います。実際の相続の際には、多くが問題なく相続する者が決まることが多いですが、相続人などの関係者の調査に時間がかかったり、遺産分割などで当事者が紛争中であったり、相続放棄などを検討したり等、様々な事情があるために、期限までに申告書を提出することが難しい場面があります。
そこで、まず、申告の期限についてお聞きします。

質問:

現所有者であることを知った日の属する年の翌年の1月31日又は現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過した日のいずれか遅い日までに、とありますが、被相続人が亡くなられた事実は知っていたとしても、例えば被相続人に子供がいる場合は、親・兄弟はその子供が相続放棄をしたことまで知らなければ、自らが相続人になったことは分からないですし、また、相続財産があることを知らない、被相続人が遠方に所有していた財産など所在が判明していなかった場合もあります。
では、この「現所有者であることを知った日」とは、被相続人が亡くなったことを知っただけでなく、「自らが相続人であることを知った日」に加えて「具体的に相続する財産があることも知った日」を指すものなのでしょうか、お答えください。

答弁:

1.地方税法第384条の3の「現所有者」とは、登記簿等に所有者として登記等がされている個人が死亡している場合において、当該土地又は家屋を所有している者を指すもので、具体的には、「現所有者であることを知った日」とは、「相続する具体的な財産があることを知った日」のことをいうものです。

質問:

次に、遺産分割などで当事者が紛争中などの場合も想定されます。相続人が複数存在し、遺産分割協議が整っていない場合は、現所有者が決まっていないので、申告ができないのではないかと考えます、私が相談を受けた中では、現に申告書の作成に相続人全員の協力が得られなかった場合もありました。遺産分割協議が整っていない場合は、どうしたら良いのでしょうか、お答えください。

答弁:

1.遺産分割協議が整っていない場合、民法第898条の規定により、財産は法定相続人全員の共有となります。
2.したがって、法定相続人に現所有者として申告していただく必要があります。

質問:

次に、相続するか、限定承認するか、相続放棄をするか検討されている方が、この申告書を提出すると、「現所有者であることを知った」つまり、自分が所有者であることを認めたことになります。法律用語で単純承認といいます。そうすると、相続放棄や限定承認ができなくなってしまいます。そのため、相続放棄などを検討している人(これには熟慮期間伸長の申立てを家庭裁判所に申し立てている人を含みます)のために、例えば、申告書には「相続放棄検討中です」など、単純承認とならないような記載ができるようにする配慮が必要だと考えますが、どのように対応するのでしょうか、お答えください。

答弁:

1.本市では、これまでも現所有者について任意の届出を求めてきましたが、このたびの申告書提出の義務化に伴い、申告書の様式等を新たに定める必要があります。
2.その際には、議員御指摘の点も含めて検討し、申告する人にとって分かりやすい申告書となるよう努めて参ります。

質問:

次に、申告すべき事項について、正当な事由がなく申告をしなかった場合に10万円以下の過料を科することとされていますが、「正当な事由」とは具体的にはどのような事由を指すのでしょうか?お答えください。

答弁:

1.「正当な事由」とは、申告義務者の重傷病や自己の責めに帰さないやむを得ない事実、具体的には、地震、暴風、豪雨等の自然現象の異変による災害等がある場合が該当するものと考えています。
2.ただし、過料につきましては、これを科すことが目的ではなく、申告義務があることを重く受け止めていただき、適正な申告につなげるためのものと認識しています。
3.申告が困難な事情がある方については、個々の事情を伺い、「正当な事由」に当たるかどうかの検討も含め、個別の事例ごとに丁寧に対応して参りたいと考えています。

2点目は、使用者を所有者とみなして課税する制度についてお伺いいたします。
議案説明書によると、市が一定の調査を尽くしても、なお、固定資産の所有者の存在が不明である場合には、当該固定資産の使用者を所有者とみなして課税できる措置を講ずることとされています。
具体的には、地方税法第343条第5項に規定する探索(これは相当な努力を払っておこなうものとされています)を行っても、なお、固定資産の所有者の存在が不明である場合には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。そしてこの場合において、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならないとされています。

質問:

さて、所有者の存在が不明として考えられるのは、1つ目は、相続人が戸籍から判明しない、または、相続人全員が相続放棄している場合など相続人の存在自体が不明の場合、2つ目は、所有者の所在が不明、所有者の生死が不明、相続人の所在が不明、さらに相続人の生死が不明などが考えられます。
広島では、海外に移住された方が多くいらっしゃるなどの経緯から、固定資産の所有者やその相続人が海外に出国し、その後の所在等が不明となっているケースも、今なおあります。
そこで、まず、ここでいう「所有者の存在が不明である場合」とは、どういった場合なのでしょうか、海外に出国するなどして、その所在が不明な場合も含むのでしょうか、お答えください。

答弁:

1.「相続人全員の死亡又は相続放棄により相続人がいない場合」などが「固定資産の所有者の存在が不明である場合」に該当するものと考えます。
2.一方、議員御指摘のような、「海外に出国する等して所在が不明の場合」は、後に所在が判明する場合も考えられることから、そのことのみをもって「固定資産の所有者の存在が不明である場合」に該当することにはならないものと考えます。
3.現在、総務省においガイドラインを作成中であり、今後、示されるガイドラインも踏まえつつ、個別の事例ごとに判断し、丁寧に対応して参りたいと考えています。

質問:

また、所有者が不明な土地又は家屋について、実際にそれを使用している者がいても、課税することができないというのは不合理だとは考えますが、使用者を所有者とみなして課税する場合には、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知することとはされているものの、いきなり課税するのは、乱暴であると考えます。この点について、本市はどのように対応するのでしょうか、お答えください。

答弁:

1.今回の改正により使用者を所有者とみなして課税することができるのは、課税庁が所有者探索を尽くしでもなお所有者の存在が一人も明らかにならない場合です。
2.使用者に対して課税する際には、当該使用者に対して使用の経緯や実態の質問等の調査を行うほか、課税することの根拠や条件等の説明を行うなど個別の事例ごとに丁寧に対応して参りたいと考えています。

要望:

現所有者の申告制度の新設について要望です。認知症や精神障害などで当事者に管理能力が無い場合は、その者に成年後見人などが着任するまでは、申告しようにも申告ができません。その場合は、成年後見人などが着任して、その者が本人が相続人であることを知り、かつ、相続財産があることを知ってから3か月以内ということになると思います。このように様々な問題がありますので、3か月以内ということで形式的に運用しないよう、重ねてお願いいたします。

次に、使用者を所有者とみなして課税する制度について要望です。
そもそも、本件の場合は、従来からある、相続人不存在の手続き、不在者財産管理人の手続きが使用できるもので、本市は利害関係人として、これらの手続きを家庭裁判所に申し立てできます。本来の手続きを検討せずに、安易に、使用者課税にならないようお願いします。

最後に、これまで、広島市市税条例に定められていた、過料を科する規定は、固定資産税の納税管理人に係る不申告、住宅用地の申告など、所有者本人だけで出来るものであり、法律上の紛争とは無関係のものでしたが、今回の改正については、相続人間、相続人と債権者、所有者と使用者など利益がそう反し、将来、法律上の紛争となる可能性があるものが存在します。これまでの、過料の規定と決定的にその性質が異なるものなのです。
改正が可決された場合、その施行までに期間があります。それまでに、しっかりと運用指針を作成し、公表も行い、問題が無いよう運用には細心の注意をお願いします。
また、相続の手続きについては税理士など専門家が携わることが多いですので、これら士業への通知や研修なども検討ください。
以上で終わります。

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